インターンシップでの動画活用戦略とは?先行企業に学ぶ成功の秘訣 | MOTION.net

インターンシップでの動画活用戦略とは?先行企業に学ぶ成功の秘訣

今や新卒採用の主戦場は、大学3年(大学院1年)時のインターンシップに移ったと言われています。リクルートの就職みらい研究所の調査によれば、「2025年卒の学生の73.6%がインターンシップ・1Day仕事体験等に参加し、その参加社数は一人当たり平均5.64社」だといいます(『就職白書2025』)。

また、企業側の視点で見ると、26年卒の学生に向けたインターンシップは上場企業で89.1%、非上場企業でも73.1%が実施したというデータもあります(学情『2026年3月卒業予定者 採用動向アンケート』)。このコラムをお読みの人事採用担当者にとっては納得感のある数字でしょう。

就業体験を通して企業や仕事を体験するインターンシップは、いわゆるミスマッチ回避の意味で有意義な取り組みでしょう。ただ、求める学生を集めることや、学生を受け入れ納得感ある体験を提供するのは、企業側にとって大きな負荷になっているとも聞きます。そこで増えてきたお問い合わせがインターンシップでの動画活用です。そんな声にお応えして、従来の会社説明会やエントリー受付サイトでの動画活用との違いを意識しつつ、他社の動画も事例としてご紹介しながら解説しましょう。

なお、このコラムではキャリア形成支援プログラムのインターンシップやオープン・カンパニー、仕事体験等を総称してインターンシップと表記しています。また、引用した各社の動画は、全てがインターンシップ用に制作されたものではありません。あくまでも活用方法を解説するサンプルとしてご覧ください。

学生の“熟成度合い”を意識する

インターンシップに臨む学生の多くは、志望先を絞り込み始めた段階です。インターンシップのメイン・プログラムとして、仕事体験や先輩社員との対話などを用意されているのなら、そんなステイタスの学生に対しては、導入として業界理解や企業の強み、企業文化のアピールする「簡潔な動画」を活用するのが効果的です。

「業界と企業を端的に理解させる」

そんな活用方法を想定したときに参考にしていただきたいのが、株式会社メガネトップの『【眼鏡市場】3分でわかるメガネトップ』という動画です。

眼鏡市場というブランド名で事業を展開するメガネトップは、まさに売上高業界トップの企業です。動画は、そのポジションだからこそ説得力を持つ「日本のアイウェア市場規模」を入り口に、海外マーケットにまで言及します。そして、メガネの多様な使われ方や機能提案の広がりを伝えることで、「メガネ=視力矯正」という先入観を払拭し、アイウェア市場の可能性を一気に表現します。

後半はメガネトップの企業としての強みから理念まで語ります。「3分でわかる」というタイトルですが、実際は2分45秒。端的に表現する構成は見事だと思います。

表現手法は「モーショングラフィック」です。ビジュアルの要素をシンプルにすることで、訴求すべき内容を真っ直ぐに伝えることに成功しています。デザインや動きの設計にも配慮がされており、メガネトップのブランド向上にも貢献しそうです。

なお、モーショングラフィックは最近ご依頼が多い表現手法ですが、「安く上がるから」という勘違いが多いのが残念です。“伝わる動画”にするためには、構成力とデザイン力が必須の手法です。
伝える内容を厳選しデザイン力で端的に語ることで、インターンシップ導入時に学生の知識を同期させる…それが効果的な活用イメージです。

「企業の魅力をCGで強く押し出す」

同様にグラフィックの力で企業の魅力を存分にアピールしているのが、福岡県大川市に本社を置く「タンスのゲン株式会社」です。もともとは家具メーカーとして1964年に家具の街・大川市で創業したタンスのゲンは、インターネット通販で急成長し、現在は「家具から始まる“暮らし”のネット通販」を謳って事業領域を広げています。

採用においては一般的に、地方に本社のある企業は苦戦しがちです。採用予定者数と求める人材像に応じて「地元に残った優秀層の採用」から、「地元を離れ進学した学生のUターン採用」「本社所在地に縁のない学生のIターン採用」へと展開されますが、それに合わせて難度が高まっていく傾向にあります。

実際の採用活動には距離の問題も大きく立ちはだかります。その距離の課題解決も意識し、タンスのゲンは「大川留学」と命名した多様なメニューのインターンシップをオンライン形式で実施しています。そのインターン募集サイトに置かれているのが1分15秒の『採用イメージムービー』です。

この動画はイメージ静止画とタイポグラフィーをCGで組み合わせ、ノンナレーションでアップテンポに展開しています。地方の立地を「ものづくりの街」「家具の街」と歴史的に意味づけをし、それを「ひと、もの、情報が集まるインテリアバレー構想」にアップデートしてアピールします。

また地方の家具メーカーがECでマーケットを広げ、「大川発→世界行き」というコンセプトを語る企業像に進化したことを印象的に訴えかけます。だからこそ、「伸るか反るか、キミの挑戦を待つ」という強いメッセージで締める動画にまとめることができるのです。

メガネトップと同様に伝える内容を厳選し、デザイン力で端的に表現しています。コピーワークもCGも決して“勢い”で誤魔化しておらず、だから逆にタンスのゲンの“勢い”が伝わってくる動画になっています。なお、タンスのゲンはインターン募集サイトに6本の「社員インタビュー・座談会動画」も掲載し、興味を持った層を企業研究に進展させる工夫もしています。

学生と企業のカルチャーフィットを意識する

もともとインターンシップは、実際の職場で現実の仕事を体験する場でした。学生は意欲を持って主体的に参加し、企業は学ぶ場を提供しフォローすることを第一義としていました。

しかし現在は、インターンシップが当たり前になりました。学生は就職を意識して参加、企業も早期の採用活動と捉えるようになってきました。結果として、「1Day仕事体験」という会社説明会と違いがわかりにくい催しがメインになってきています。

2025年卒の学生・院生に向けた調査では、参加期間は「1日体験」が57.9%でトップ。「半日体験」39.4%を含めると、「半日または1日」が71.9%を占めます。(複数回答。出典:リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』)。

この潮流と無縁に、独立独歩で採用活動を行うのはリスクが高いでしょう。では「1Day仕事体験」が主流という現実の中で、インターンシップをいかに学生と企業の両者に意味あるものにするか。その解のひとつが動画です。

動画でコミュニケーションの“下地”を作り、プログラムでは出来るだけ具体的な体験や踏み込んだコミュニケーションを提供するという考え方が生まれてきています。キーワードは「カルチャーフィット」です。多くが大学3年の夏という早期に接触することを考えても、カルチャーフィットは重要な観点です。

「インタビューで人と仕事、組織を表現」

企業のカルチャーを映像で表現する時、やはり題材は人であり、その人が取り組む仕事と環境としての職場がメインになるでしょう。つまり、従来型の説明会やセミナーで利用していた動画に近くなるはずです。

この人と仕事を題材にするというオーソドックスな動画は、実は結構難しいのです。なぜなら、業種や職能によっては他社との差が描きにくいからです。

そんな難題を魅力的に超えた『シミズノヒト』をご紹介します。この動画は、入社1年目と2年目の2人の若手社員が入社動機などを語るインタビューを片方の軸に据え構成しています。そして、その若手社員のコメントに呼応するように、大勢の先輩社員のコメントをモザイクやパッチワークのように組み合わせて編集しています。いろんな人たちの声がある統一感を持って訴えかけてくる。そのことで、まさに清水建設のカルチャーを表現しています。

『シミズノヒト』は清水建設株式会社の土木系新卒採用のために制作された動画です。清水建設はいわゆるスーパーゼネコン5社の一角を占め、日頃からテレビCMなどを通じて認知度と好感度の獲得に務めています。しかし、その清水建設にあっても現場技術職の採用は決して楽ではありません。だからこそカルチャーフィットは非常に重要です。

この『シミズノヒト』はインタビューコメントだけでなく、そのコメントの随所にインサートされる現場のシーンが、とてもダイナミックで美しいのも印象的です。丁寧に計算したカメラワークで撮影したカットを、編集工程の色調整で更に深みのある表現に組み立てている、そんな秀作だと思います。

若手社員二人に共通して、「インターンシップで社員の方に接して」という趣旨のコメントが出てきています。狙ったものかどうかはわかりませんが、もしこの動画を事前に目にすることができれば、インターンシップにエントリーする動機形成に役立ちそうです。

「座談会で人と仕事、組織を表現する」

企業のカルチャーを表現する動画のもう一つの代表例が、座談会です。この座談会企画も人選とトークテーマの選定が極めて重要です。制作の工程では、どれだけ話しやすい撮影環境を作り上げ撮影するかと、どれだけノンバーバルコミュニケーションを意識して編集するかが鍵になります。

座談会動画は社員が語り合うだけに、いろんな意味で社風がにじみ出ます。カルチャーフィットを目指すインターンシップでは王道の動画活用かもしれません。代表例として、『商船三井 若手座談会 ~陸上職事務系~』をご紹介します。

株式会社商船三井は海運業界の名門で、いわゆる採用ポジションの高い会社です。就職人気ランキングの上位に顔を出す会社ではありませんが、旧帝大や難関国立大、早慶の学生を中心に採用しています。

その商船三井が制作した『若手社員座談会 ~陸上職事務系~』には、所属部署だけでなく、新卒・中途の違いや社歴にもバリエーションをつけた4人が参加しています。この座談会動画は21分30秒の長さがありますが、実は仕事シーンのインサートなど、対談トーク以外の映像は一切入りません。

それでいて各々の方の仕事内容が見えてくるように感じます。何より自分の仕事の面白さやそこで抱く充実感が、4人の語り口や表情から伝わってきます。それがまさに商船三井のカルチャーと言えるのでしょう。この動画をインターンシップで視聴したら、学生はさらに突っ込んだ企業研究に進みたいと思うはずです。料理に例えれば(失礼!)素材の良さがそのまま味わえる、そんな動画だと思います。

インターンシップなど、学生とのコミュニケーションの場の参加してほしいと採用担当者が考える社員は、実はそれほど多くないと聞きます。そんな社員に、毎回協力を依頼するのは難しいでしょう。でも動画なら一回の撮影協力でコンテンツ化できます。この座談会動画でカルチャー共有の下地ができるなら、採用担当者は他のインターンシップのプログラム作りに注力できそうです。

「エピソードの映像化でカルチャーを表現する」

素材の良さをそのまま表現するというアプローチの対極として、手間を掛けたドラマ手法で企業のカルチャーを印象的に伝える。そんな動画活用の仕方もあります。

全国で調剤薬局を展開する株式会社G&Gワークスホールディングスは、グループが目指す接客品質や患者に向き合う姿勢を伝えるために、実話をもとにしたショートムービーを制作しています。それが『小さな当たり前』です。

担当したプロデューサーによれば、この『小さな当たり前』はインナーブランディングのために制作した動画ですが、採用の局面でも積極的に使っているそうです。カルチャーの共有という目的を考えれば、学生に伝えるツールとしても十分に有効です。

実話が持つ説得力が映像化でさらに力を増すなら、ストーリーで語るショートムービーは他社と差別化しやすい手法ですので、大きな効果が期待できそうです。

インターンシップを題材にした動画の活用

インターンシップそのものを題材に動画を制作し、次のインターンシップ志望者を募るプロモーションに活用している企業もあります。夏のインターンシップを取材撮影し、秋冬のインターン募集サイトに掲載するなども可能です。もちろん、翌年のインターン募集用にも活用できます。

インターンシップのプログラムや、それに取り組むインターン生の姿を描いた動画は、インターンシップを検討する学生にストレートに響くでしょう。その一例がダイドードリンコ株式会社『DyDo Internship Special Movie』です。

ダイドードリンコは大阪本社の飲料メーカーです。インターンシップにも積極的で、2025年には5日間の長期インターンシップを、オンラインとオフラインを掛け合わせたハイブリッド型で実施しています。

動画は人事総務部担当者とインターンシップ参加者のインタビューを軸に、座学やグループワークの様子をインサートしながら展開する構成です。「自己理解にもフォーカスし、手厚いフィードバックをしている」との人事総務担当者のコメントが、ダイドードリンコのインターンシップに臨む真摯さを表現しています。

ダイドードリンコのインターンシップが5日間だったように、インターンシップそのものを題材に動画化するなら、長期インターンシップの方が向いていると思います。しかし1Dayの仕事体験でも、例えば現場感のあるプログラムもあるなど、人事担当者が手応えを感じているなら、1Dayをドキュメントした動画を発信する方法もありだと思います。

最後にJR東日本のインターンシップ・ドキュメント動画をご紹介します。

JR東日本はインターンシップの人気企業です。非常に多くの希望者が集まるそうで、学生は書類選考(エントリーシートや自己紹介書、小論文など)で絞られた上で、面接を経てインターンシップに辿り着きます。

その厳しい選考を経たインターン生たちは、時に楽しそうに時に真剣に、JR東日本を体験していきます。インターンシップムービー「Be Around」は、その様子を演出たっぷりに撮影し、テンポよく編集しています。

インターンシップを題材に動画を制作し、その動画を活用して次のインターンシップ志望者を集める。それだけでなく総体的なプロモーションとしても魅力的な動画です。 JR東日本のインターンシップムービーは、その高みにある動画と言えそうです。

インターンシップから始まる持久戦を勝ち抜くために

インターンシップは次第にその姿を変え、現在は早期の採用活動になってきていることは前述した通りです。従って、出遅れないために多くの企業がインターンシップに乗り出さざるを得ない状況になっています。採用活動が一層長期化したと言っていいでしょう。

一方で各企業の採用意欲は依然として旺盛で、インターンシップから始まる採用活動は、時間と手間と予算をかけた持久戦の様相を呈してきています。

そんな状況だからこそ、動画活用の検討をお勧めします。狙いを定めて設計できれば、効率化の視点でも、プロモーションの視点やカルチャーフィットの視点でも、動画はインターンシップ時代の採用の「成功の秘訣」になるはずです。

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