導入事例記事を社内で制作してきた企業が、事例動画に着手することになった際に寄せられる典型的な質問があります。
それは自社の社員がインタビュアーを務めるのか、あるいは映像制作会社のスタッフにインタビューを委ねる方がよいのか、という質問です。
そもそも良い導入事例動画を制作するためにインタビューが果たす役割はなにか、インタビュアーに求められる技術とは何なのかをご説明しながら、そんな質問に分かりやすくお答えします。
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目次
導入事例の肝はインタビュー
導入事例は自社の製品・サービスを導入したお客様のケースを例にして、顧客候補にプロモーションする手法です。そのプロモーション効果を左右するのはお客様の言葉、それを引き出す方法がインタビューです。
インタビューするのは社員かプロか…それぞれにメリットとデメリットがあります。
自社の社員がインタビューする場合のメリット・デメリット
導入事例は、「どんなお客様がどんな課題を抱えていて、自社の製品やサービスを導入することで、その課題をいかに解決したのか」がアピールする内容です。
記事型の導入事例制作だけなら、マーケティング担当者など自社の社員がインタビュアー役を務めることも多いようです。
商品やサービスを熟知しているというアドバンテージがありますので、その意味では上手くコメントを引き出せるかも知れません。コスト面でもメリットがあります。
一方で、たとえば製品・サービスのアピールに終始するなど、自社視点に陥りがちというデメリットも目立ちます。また、リアルなエピソードや魅力的な実感コメントを引き出す技術は必要になります。
プロにインタビュアーを委ねる場合のメリット・デメリット
プロにインタビューや事例制作を依頼する企業も多くあります。
やはりプロなりの、言葉を魅力的に引き出すインタビュー技術に一目置いているからでしょう。
特に動画事例の場合は、インタビューで引き出したお客様の言葉“そのもの”がより重要になります。
なぜなら動画の場合は、文章のように“後から修正”することも“言葉を補足”することもなかなかできないからです。
特に日本語の場合は、会話の文脈のなかで主語や目的語を省略することが度々あります。
質問に対して「はい」「いいえ」で終わらせないために、ちょっとした工夫も必要です。
取材収録時に不足なくコメントを引き出せるか、いかに魅力的に信頼感ある語り口でコメントしていただくか。
そこには、インタビューする技術が不可欠です。
デメリットはなんといっても費用がかかること。
また、力量のあるプロに出会うのは結構難しいというのも難点かもしれません。
事例動画のインタビュー構成には定型がある
とはいえ事例動画のインタビューは、ドキュメンタリー映像を作るわけではありませんので、選ばれたプロだけにしかできないわけではありません。
事例動画にもドキュメンタリー的要素はありますが、一方で型ともいえる基本的な構成があります。
この基本的な構成があるからこそ、ご覧になる顧客候補はケーススタディとして参考にしやすくなるという側面もあります。
ここではインタビュー構成の基本型と、定型を超えた質の高いインタビューを実現するためのポイントをご説明します。
事例動画の基本構成とは
導入事例動画の構成は、例えば下記のような5部で構成するパターンが基本です。
上記の構成を基本型とし、そこに自社の製品・サービスやターゲット顧客層の業種業態などの特性、そして取材するお客様企業の情報を流し込めば、基本的なインタビュー項目はある程度作成できます。
そこから具体的な質問に落とし込んでいきます。
定型を超えた質の高いインタビューを実現するためのポイント
その上で事例テーマ(導入した製品・サービス活用の詳細)と、取材するお客様をじっくりと調べ、そこから深掘りした質問考えるのが大切なポイントです。
つまり、定型に止まらないプラスαの知識・情報が、良いインタビューをするために生きてくるのです。
お客様を描いてこその“ケーススタディ”です。そのお客様の「ならでは」を浮き彫りにするインタビューができて、初めてプロモーション効果のある導入事例になるのです。
インタビュー品質を高める2つのコツ
若いスタッフにインタビューのトレーニングをする時、「とにかくテーマを深く調べ、取材先(お客様など)についての情報をできるだけ多く入手せよ」と指示します。
つまり、定型に止まらないプラスαの知識・情報を調べて読み込むということです。
ではインタビューの際にその情報をどう役立てるのか。2つのコツをご紹介しましょう。
コツ1 質問を“深掘り”し“拡張”せよ
質の高いインタビューをするための1つ目のコツは、質問の“深掘り”と“拡張”です。
定型通りの質問だけでは引き出せない、お客様の本当の声があります。
そこには鉱脈が眠っています。深掘りした質問はお客様の姿を豊かに表現します。
また、少しずつ視点をずらして質問を拡張すると、魅力的なエピソード(事実)や新しい発見に行き着きやすくなります。
「そう言えばこんなことがあって…」という展開になれば、事例に幅と奥行きが出てきます。
コツ2 動画インタビューの制約を武器にせよ
「動画のインタビューには制約がある。文章のように、“後から修正”することも“言葉を補足”もできない」と冒頭でご説明しました。
でも動画インタビューの制約は、同時に武器にもなり得ます。
例えば動画の持つ非言語情報である「語り口や表情」がそれです。
2つ目のコツはこの好意的な非言語情報を引き出すために、インタビューする時間を“心地よいもの”にすることです。
これは一見難しそうですが実はシンプルです。
お話を伺う企業やケースに対して、インタビュアーならではの興味を持ってインタビューすれば実現できます。
その興味の源泉は、テーマやお客様についての情報の量です。
自社に興味を持ってインタビューしてくれれば、インタビュイーであるお客様は生き生きと語ってくれる…それは自分自身に引き付けて考えれば納得できるでしょう。
そのことでインタビュイーであるお客様の表情や語り口、声のトーンなどを武器にでき、動画の制約は動画ならではの表現力や信ぴょう性に転換できるのです。
コラボすべきプロとは
では、プロの映像制作会社のスタッフなら上手なインタビュアーができるのか。
実はそうとも言えないのが現実です。
そこで、プロとコラボする際の注意点をご紹介しましょう。
注意点1 動画制作のプロがインタビューのプロとは限らない
実は、映像業界にもクラウド化の波が及んでいます。Webサイトで案件と動画制作スタッフをマッチングする「クラウドソーシング」がそれです。
クラウドソーシングの普及で、取材やインタビューの技術を身に着けていない、映像編集に偏ったディレクターが急増しています。
ひとりで訓練を詰める動画編集とは違い、取材やインタビューは相手があって初めてできることです。
どうしても若いフリーランスでは限界があります。
注意点2 力量あるプロを見分ける
では、制作スタッフのインタビューの力量を見分けるにはどうすれば良いのか。
ひとつの目安は、「どこまで資料を求めてくるか」と「どこまで下調べしてくるか」です。
実際の質問には反映されないかも知れません。
ですが、繰り返しになりますが、インタビューする際の安定感やアドリブ力を支えるのはプラスαの知識・情報です。
注意点3 クライアント担当者としての役割に留意
力量のあるプロと出会ってインタビュアー役を委ねる。
では、クライアントの担当者の役割は何なのでしょうか。
先ず役割として意識したいのは、インタビュー内容のチェック役です。
インタビューに立ち会ってベンダー側の視点でコメントをチェックし、時には追加質問するのも必要です。
その上で、お客様にとっても自社にとっても“いいコメント”を引き出すために気を配ることも大切な役割です。
なぜなら、導入事例取材に応じてくれたお客様はかけがえのない存在であり、同時に優れたエバンジェリストになってくれるからです。
担当者として要点を押さえたインタビューをプロデュースできれば、事例動画の品質は驚くほどアップします。