秘訣は前工程にあり!効果を生む社員紹介動画の作り方 | MOTION.net

秘訣は前工程にあり!効果を生む社員紹介動画の作り方

人材採用のための広報ツールはいろいろありますが、定番中の定番が社員紹介動画です。
仕事紹介動画とかワークスタイル動画などと呼ばれるものも同一と考えてよいでしょう。

これらの社員紹介動画のニーズが高い理由は、志望者目線で仕事や企業を理解させやすいからです。

一方で、作り方が画一化してきたために「どの会社も、どんな社員も同じ見える」という就活生の声もよく聞きます。

そんな課題を解決し、社員や仕事の魅力を存分に描く動画にするための秘訣は、実は撮影の前の工程での準備にあります。
採用動画に25年以上にわたって携わってきたベテランプロデューサーが、効果を生む社員紹介動画にするために人事担当者ができることを解説します。

社員紹介動画の手法と狙い

採用のための社員紹介動画は、社員のコメントや仕事シーンの描写を通じて志望者に入社後の自分をイメージさせることを狙って制作されます。

プロモーションの効果もさることながら、限られた予算(撮影日数等の仕様)でも“そこそこ”の動画が作成できるという費用対効果も、社員紹介動画が重宝される理由でしょう。

では、その社員紹介動画で用いられる代表的な表現手法を3つご紹介しましょう。

手法1・社員インタビュー動画

一番多用される手法は、社員のインタビューをベースに仕事シーンをインサート(カットを差し込む)する「社員インタビュー動画」です。
この手法は志望者のニーズに素直に応えるものとされており、たとえば「先輩社員の1日」などが代表例です。

登場する社員のパーソナリティ表現に時間を割いて、「ワークスタイル動画」と呼ぶ採用広報会社もあります。

この手法は予算ありきで選択されることも多く、撮影日数の関係でインサートカットの撮影が限られることも。
オフィスワーク中心だと似通った動画になってしまうため、「自社ならでは」の仕事シーンを入れ込んでいく工夫が必要でしょう。

カミソリメーカーの貝印の社員紹介動画は、営業や開発、製造など7つの職種を3分30秒の動画に収めた構成で、会社全体を俯瞰するようにまとめている良作です。

「KAI GROUP CUTTING-EDGE SPIRIT」

手法2・社員インタビュー+企画動画

「社員インタビュー動画」を基本に、ちょっとした企画性を加えてその企業らしさを表現する手法もあります。
便宜的に「社員インタビュー+企画動画」と命名します。

風通しのよい社風を表現する企画として、上司や先輩からの「他己紹介」インタビューを加えるとか、業務で提案が多い企業では社員が「志望者に向けてプレゼン」するとか、起承転結でいえば転の部分に企画性を加えるというものです。

企画部分の作り込みにどこまで注力できるかが、個性的で訴求力のある動画にできるかのポイントになりそうです。

手法3・企画動画+社員の仕事シーン&インタビュー

手法2をもっと進めて、その企業らしさを全面に出した企画をベースに、その中で(あるいはその上で)社員や仕事を描くという、「企画動画+社員の仕事シーン&インタビュー」と呼べるような表現手法の社員紹介動画もあります。

志望者と企業を自然につなぐ企画性と、動画にまとめる演出力がカギになります。成功すれば個性的で志望者に刺さる社員紹介動画にできます。
逆に志望者に媚びすぎた動画や、求める人材に届かないメッセージになる危険性もあるので注意が必要です。

ロフトの「台本のないチーフ座談会」はその点をクリアし、ロフトらしさを感じさせることで話題になった秀作です。

LOFT「台本のないチーフ座談会」

「求める人材像×知ってほしいこと」を動画に

採用広報ツールとして社員紹介(仕事紹介)の動画を作りたいという依頼を受けた時に、人事担当者と共有することポイントがあります。
それは、「求める人材像×知ってほしいこと」を押さえた上で制作を進めるということです。

当たり前と思われるかも知れませんが難しいことも。具体的にご説明しましょう。

出演社員は社内事情に縛られない人選を

企業の人事部はバランスを求められる部署です。
しかし広報ツールの制作では、それが落とし穴になることもあります。
例えば「営業職と製造職を採用予定だが、人気のある開発職も一応入れておきたい。
また、バックオフィス職も加えないと会社的にまずい」とかになってしまうケースは実は結構あります。

しかしそこは幅を広げ過ぎず、採用ニーズが高い部署・職種から動画化しましょう。
そのことで予算も集中でき、結果的に動画の質を高めることにつながります。

どうしても出演する社員のバランスをとる必要があるなら、例えば“助演”で構成に組み込むなどの手もあります。

また出演を要請する社員も、人事担当者の目で見て志望者に目標として感じてもらえる、つまり求める人材像に沿った人選にすべきです。

評価される社員はインタビューコメントや表情、仕事の様子などである種の自信や魅力がにじみ出ます。動画を視聴する志望者には必ず伝わりますので留意してください。

「志望者が知りたいこと」を一旦疑ってみる

人事担当者が陥りがちなもう一つの失敗に、内定者へのアンケート等から動画ツールの企画を決めてしまうことがあります。

例えば内定者に「動画を通して知りたかったことは何か?」とアンケートすると、「社員の1日」が必ず上位に来ます。
完全に否定はしませんが、でもそれは学生なりに一生懸命考えた答えに過ぎないことの方が多いと思います。
新卒採用の場合は特に、企業や仕事の実際を知らないため他の答えを思いつかないことも多いのです。

人事担当者に意識してほしいのは、「示すべきは求める人材像。醸成すべきは仕事や企業への強い参加動機」という採用広報の原点です。

古い事例ですが証券会社の採用動画で、一人の為替ディーラーが実際の取引に臨む1時間に絞って定点カメラで描き、特に意識の高い学生から評価を得たことがあります。

また伊藤忠商事が採用を意識して制作した60秒のCMで、コーヒーを扱う事業部門の社員たちが試飲する様子だけを切り取って作り上げ、志望者を集めた傑作もあります。

動画で切り取ったわずかな時間に仕事の醍醐味が凝縮されており、その社員が経済を動かす存在であることを志望者に強く感じさせるという、採用広報の原点が二つの動画にはありました。

予算不要!動画の質を高める2つの事前準備

社員紹介動画に限らず、企画コンペで発注先を決めることが多くありますが、その際にも注意してほしいことがあります。

コンペの際に制作会社側が事前に入手できる情報は限られています。
だから各社は採用サイト等から同じ情報を得て、少しだけエッジを効かせた企画(的なるもの)で差別化を図ろうとします。
しかし、その企画は本質とは少し距離があるはずです。

だからコンペで発注先を選定したとしても、その企画のままで制作に入るのではなく、改めて詳細のオリエンをしたのちに正式な企画を立てシナリオ化してから進行すべきです。

それを前提に、社員紹介動画の質を高めるための、特別な予算が不要な事前準備を2つご紹介します。

事前準備1・出演社員へのアンケート

正式な企画を立てるために、制作スタッフに提供する事前情報で必須なのが出演社員へのアンケートです。
社員紹介動画の制作では、このアンケートは必ず実施してください。

アンケートでは、出演社員のプロフィールや担当する仕事、その仕事に対して感じる面白さや将来の目標などを記載してもらい、人物像や取り組む仕事像を制作スタッフに事前に把握してもらいましょう。

それらの回答が、志望者に「求める人材像」と「仕事の醍醐味」示すための基礎データになります。

アンケートの「ひな形」をご用意しました。参考にしてみてください。

採用広報動画「ワークスタイル」篇 出演者アンケート

事前準備2・シナリオハンティング

アンケートに加えてぜひ検討してほしいのが、制作スタッフによる事前取材(シナリオハンティング=シナハン)です。
シナハンといっても特別なことではなく、出演社員と1時間から1時間半程度面談をするイメージです。

この面談は貴重な情報源になります。社員の人物像を深掘りできる材料が手に入りますし、同時に撮影項目を広げたり絞り込んだりする手がかりにもできます。

シナハンは大勢のクルーが稼働するわけではありませんので、コストへの影響も軽微なはずです。
確かにブッキングなど人事担当者にとっての手間は増えますが、シナハンで材料が手に入れば社員紹介動画にありがちな画一的表現ではなく、自社ならではのオリジナルな構成にできる可能性が高くなるでしょう。

ぜひ、制作会社に要望してみてください。

事前準備のもうひと手間・ロケーションハンティング

採用動画では撮影のための下見(ロケーションハンティング=ロケハン)をするケースは少ないかも知れません。
確かにシナハンができれば、プロデューサーやディレクターから撮影スタッフに、事前に整理した情報を渡すこともできます。

ただしロケハンができれば、事前の演出プランにカメラマンや技術スタッフの視点が加わりますので、撮影されるカットの質は高まります。
撮影の段取りも丁寧に組めますので、撮影当日はスムーズに進むはずです。

もうひと手間が許されるなら、ロケハンも検討してみてください。

採用側の意志が見える社員紹介動画が採用を成功に導く

採用広報ツールの定番である社員紹介動画の作り方のポイントを、前工程に絞ってお伝えしてきました。

もちろん撮影工程や編集工程も大切ですが、前工程がしっかりと組めていれば実は動画の質はかなり確保できます。
逆に前工程を疎かにする制作スタッフの場合は、仕事ぶりを細かくチェックする必要がありそうです。

発注先を決める際には、制作会社に前工程への取り組み方も確認することをお勧めします。

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