モーショングラフィックスの制作の流れをご存じですか。
いざ制作会社に発注しようと思っても、制作の工程や担当者としての注意ポイントが分からないという声をよく聞きます。
そこで今回の記事では、企業でモーショングラフィックスの発注・制作に携わる方々のために、モーショングラフィックスを制作する際のツボを分かりやすくまとめました。
どうぞ参考にしてください。
モーショングラフィックスとは
まずはモーショングラフィックスとは何か、おさらいしておきましょう。
モーショングラフィックスとはイラストや文字、図形やロゴなどに、after effectsなどの動画編集ソフトで動きを加えたアニメーションの一種です。
モーショングラフィックスを活用するメリットとしては、
- 低予算でも制作が可能
- 低予算でも「かっこいい」仕上がりになる
- 量産ができる
- 制作期間が短くできる
などが挙げられます。
詳しいことは前回の記事にてまとめています。 参照してみてください。
モーショングラフィックスとは?初心者向けにポイントを解説モーショングラフィックス制作の流れ
では、実際にモーショングラフィックスの制作は、どのような工程を踏んで進めて行くのでしょうか。
段階を踏みながら、各工程で何を行うのかを見ていきましょう。
工程1 オリエンテーション
全ての動画制作に共通することですが、まずは企業側の担当者として制作会社・スタッフに制作を依頼するに当たっての概要のオリエンテーションを行います。
テーマや視聴対象、予算や納期はもちろんのこと、どんな態度変容を促す動画を作るのか、どこを訴求点としてモーショングラフィックスを構成していきたいのかを、しっかり制作スタッフに伝えましょう。
モーショングラフィックスは、ある意味で非常に感覚的な映像表現です。だから期待に沿った仕上がりにするためには、発注者と制作側のイメージの擦り合わせが重要です。
その際、他社の動画やイラストなどサンプルを見ながらオリエンテーションを実施すると、イメージの共有は比較的スムーズに進められるでしょう。
どの媒体で見せるのかの想定の共有も大切です。
各SNSやweb、TV、トレインチャンネルやサイネージなど、現在は様々な媒体で動画広告を流すことが可能です。当然、媒体によってターゲットも異なり、視聴環境も動画への集中の度合いも違うでしょうし、各媒体によって画面の比率や尺の条件等も変わってくるので、実際のモーショングラフィックスのデザインやレイアウトにも影響が及びます。
先ずは何を目的に、誰に向けてどこで流すのかを確定し共有した上で、制作へと進みましょう。
工程2 デザインの方向性を決める
実際の制作工程は、まずデザインの方向性を決めることから始めます。
そして、モーション(動き)をつける素材として何が必要か、例えば人物などのキャラクターを使用するかどうかなども、ここで決めることになるでしょう。
制作スタッフに企業のイメージカラーや特徴的なモチーフ、文字の指定書体などを伝えておくと、デザインやメッセージの方向性がはっきりとしてきます。
工程3 絵コンテを起こす
次に構成の流れや画面内のデザイン・レイアウトなどを確認するために、制作スタッフに絵コンテを起こして貰います。
この絵コンテを使って、企業側の担当者と制作スタッフとの間にイメージのずれがないかを再度検証します。
絵コンテを作成すればデザインの要素、各カットの長さ(尺)や文字要素のレイアウトや大きさなどが、かなり具体的に擦り合わせできます。
この段階では各カットやそれを構成する要素が、訴求ポイントとズレていないかを冷静にチェックしてください。
たとえ動画として斬新だとしても、制作意図と齟齬があれば狙った効果は生みません。
それを前提に、「この要素をより目立たせたい」や「ここのメッセージはゆっくり見せたい」などの注文がある場合には、その旨をしっかりと制作スタッフに伝えましょう。
この絵コンテの工程での修正指示は重要です。動画制作の工程に入ってからの修正は、コストアップと納期遅れに直結するからです。
工程4 アニメーションをつける
絵コンテでレイアウトを確認したら、いよいよ動画編集ソフトでイラストや写真、文字に動きをつける工程に入ります。
動画の尺や構成・デザインの複雑さにもよりますが、仮編集版として大まかな動きをつけるのに、1週間ほどかかるのが普通です。
仕上がった仮編集版を試写で確認し、OKなら本番用の精緻なアニメーションの制作に移行します。本番編集にはおおよそ1~2週間かかるイメージです。
なお制作期間は、動かしたいモチーフの内容によって前後します。
例えば複雑なイラストは効果がつけづらいので、さらに時間がかかることを想定しておいてください。
必要に応じて途中段階で試写を行う場合もあります。初めてのスタッフと組む場合は、変更が効くタイミングを制作側に事前確認し、何度か試写を行うことをお勧めします。
その際に留意したいのは「指示の一貫性」。つまり「前言を安易に翻さないこと」です。
前回の試写と異なる観点で修正の指示を出す場合は、そのことを明確に伝え、優先順位を示すべきです。
それが制作側との信頼関係維持につながります。
信頼関係が崩れると、制作側は「言われた通りに作ろう」という姿勢で提案をしなくなり、結果としてまとまりのない動画になってしまう・・・そんなケースは意外に多いものです。
工程5 音の要素を作る
最後に音をつける工程に入ります。
BGMやSE(効果音)、ナレーションなどがそれにあたります。
BGMやSEは制作会社のディレクター等が調達するパターンと、専門スタッフ(音効=サウンドデザイナー)がディレクターのイメージをヒアリングし用意するパターンがあります。
通常、制作会社は2~3案を企業側の担当者に提出して、そこから選ぶことを依頼します。
動画の意図や目的を踏まえながら、社内の決裁者や関係者の確認も取りつつ、どのBGMにするか、どんなSEを付けるかなどを決定してください。
予算に応じて、プロのナレーターがスタジオで録音するパターンと、同じくプロのナレーターが自宅で録音するパターンがあります。
細かく注文をつけたいのであればスタジオ収録をし、立ち会うことをお勧めしますが、その分のスタジオ費用が発生します。
ある程度有名なナレーターや俳優(声優)を起用すれば、動画の訴求力がアップする可能性が高まります。
ただし、有名なキャストは出演費や契約費がある程度嵩みますし、きちんとしたスタジオでの収録でしか仕事を引き受けてもらえないことが多いので、その点は留意しておいてください。
モーショングラフィックス制作の注意点
その他、モーショングラフィックスの制作において、発注側の担当者が注意すべき点を総論的にまとめておきます。
制作をスムーズに行えるように、一つずつチェックしておきましょう。
素材を集めるときの注意点
アニメーションなど動きや効果を加える“素材”は、既存のフッテージを購入するか、オリジナルで作成(写真の場合は撮影)するかを決める必要があります。
特にキャラクターを用意する場合は、有料の既成イラストを購入するか、イラストレーターやデザイナーに新たに描き起こしてもらうかの判断は、出来上がりに大きく影響します。
この場合、比較的安価に済ますことが可能です。
ENVATO ElementsやShutterstock、PIXTAなどといったサイトから探すとよいでしょう。
既成データを購入する方法のデメリットは、他社との差別化がしにくくなる点です。
選択される素材は実は偏りがちで、その場合は既視感のある表現になり、訴求力の点で弱くなる可能性があります。
素材となるイラストや写真を、オリジナルで用意する選択肢もあります。
この方法では、独自性ややデザインの統一感を意識しながら、キャラクターやイラストを描いてもらう(あるいは写真を撮影する)ことができるので、訴求力もアップさせやすいですし、全体のクオリティも高くなります。
ただし当然ながら、新たに描き起こしてもらう分のコストがかかります。
有名なデザイナーやイラストレーターに依頼すると高額になりますし、素材の納品まで時間を要します。予算やスケジュールと相談をしながら選択してください。
写真を使う時の注意点
動画の中で実写の写真を使用することもあると思います。
その際の注意点は、アニメーション(動き)と写真の世界観を統一するということです。
色味や写真自体のクオリティには十分に気をつけなくてはいけません。
もし複数の写真を使用するなら、なおさら統一感に気を配る必要が出てきます。
人物写真を素材とする場合は特に、企画と狙いが合っているテイストのものを選んで貰ってください。
ガチャガチャとしたものよりは、要素を絞った写真を採用するほうがよいでしょう。
フリー素材という名称の注意点
写真やイラスト、BGMなどで既成の素材を購入してもらう際に、「フリー素材」という名称が使われることが多くあります。
「フリー」という呼称が「無償」を想像させるかもしれませんが、もちろん無償で手に入る素材はありません。
当然、見積もりには費用計上されます。
既存素材を購入する場合は、ほとんどがロイヤリティーフリー(RF)かライツマネージメント(RM)という契約形態で「使用権を購入」することになります。
各々の違いを簡単にいうと、RFは使用許諾の範囲内なら複数の用途で使用できます。
例えば、動画で使用した素材をチラシでも使いまわすようなイメージです。
一方、RMは使用する期間が限定され、別用途での使いまわしは不可です。
ただし、希望するなら別途費用を支払うことで独占使用が可能な契約形態です。
RFの方が使い勝手はよいのですが、クオリティはRMの方が圧倒的に優れているケースがほとんどです。
いずれも「ある条件で使用する権利を購入」するもので、著作権を放棄されたものではありませんので、契約外で使用した場合は訴訟リスクがあります。
実際に広告主側が訴えられたケースを耳にしたこともありますので、制作会社側がきちんと権利関係をマネージメントしているか確認してください。
各工程で確認をするときの注意点
最後に、各工程でチェックや指示出しをするときの注意点です。
前述したとおりレイアウトを決めた以降は、モチーフや文字等のデザイン要素を増やしたりカットの尺を変更したりすることは、編集上は簡単ではありません。
結果的に予算や納期に大きく影響します。
だから各工程のチェック時には、社内の意見をきちんと集約し、途中で大きな方向転換がないようにしましょう。
時々、社内の上席者とスタッフとの間で板挟みに苦しむ担当者もいると聞きます。
それを避けたいのなら、「ここぞ」という打ち合わせやチェックの場に決裁者にも参加してもらう方法があります。
特にBGMやナレーター選定は、いろんな人が好き嫌いで注文をつけやすい場面です。
なぜこのBGMやナレーターなのかという“理論武装”をしっかりした上で説明し、意見の集約をしてください。
まとめ
モーショングラフィックスの制作時に、発注側の担当者として気をつけたいことを記述してきました。いずれにせよ一番大切なことは、制作会社と二人三脚で進めるという意識です。
その信頼関係があってはじめて、ムダなコストや納期遅れを発生させずに、当初の企画意図に沿った品質の高いモーショングラフィックス動画が制作できるのです。
MOTIONではモーショングラフィックスの制作を承っています。
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