モーショングラフィックスの課題と解決策を傑作を見ながら実践解説! | MOTION.net

モーショングラフィックスの課題と解決策を傑作を見ながら実践解説!

モーショングラフィックスをプロモーション手法として採用する企業が増えてきています。自社のホームページやサービスサイトに何本かモーショングラフィックスをアップしているという読者の方も多いでしょう。

でも、どうも内容が分かりにくいとかパッとしない、他社と似ているとのご不満をお持ちではないでしょうか。

実はそれには理由があり、改善策があります。他社の傑作動画もご覧に入れながら、その改善策を我が社のディレクターが実践的な視点で解説します。

モーショングラフィックスとは

いま動画制作の依頼で目立つのがモーショングラフィックスです。

「製品やサービスの紹介で使いたい」という相談が一般的ですが、「会社概要や事業内容をモーショングラフィックスで伝えたい」というご依頼もあります。

でも、モーショングラフィックスが適しているのか悩ましいケースもあります。そもそもクライアントと僕たち制作会社とで、イメージを共有するのに時間がかかることもあります。

そこでまず、モーショングラフィックスとはどういう映像表現かという定義をハッキリさせておきたいと思います。

モーショングラフィックを定義する

例えばマイクロソフト社のAI(Copilot)に尋ねると「モーショングラフィックスは ロゴやイラスト、文字、図形、写真などに動きや音を加えたもののことで、アニメのような表現を用いて作られることが多いです。視覚的な要素を駆使して情報やストーリーを伝える手法であり、映像を通じて効果的なコミュニケーションを実現するためのツールとして広く利用されています」と定義を教えてくれます。

ポイントは、「ロゴやイラスト、文字、図形、写真(まさに英語でいうgraphic)」に「動きや音を加えたもの」という部分でしょう。

グラフィックに動きや音が加わることで、視聴者が静止画を見たときよりも理解度が高まる…それが良くできたモーショングラフィックスです。

「アニメ」「CG」…用語解釈のズレに要注意!

一方で「アニメのような表現を用いて」という部分は要注意です。この「アニメ」という言葉は人によって解釈がズレやすい言葉だからです。

一般的に「アニメ」と言うと映像業界の僕たちは、いわゆる“ジャパニメーション”的な表現手法を思い浮かべます。当社のプロデューサーも商談時に「アニメ」というオーダーが出た時は、それが“ホンモノのアニメ”なのかを確認すると言います。

あなたがクライアントの発注担当者ならば、静止画に動き(これもアニメーションと呼ばれているのですが)をつけたモーショングラフィックスであることをお伝えいただければ、打合せは齟齬なくスムーズに進むと思います。

モーショングラフィックスを想定しているのに、打合せの際に「CG」と表現されることもあります。これもしばしば混乱を呼ぶ言葉です。なぜならPCを使ってPhotshopで作るイラストも“Computer Graphics”ですし、3Dポリゴンもそうだからです。

「静止画を動かす方法として、2DCGや3DCGのソフトウェアを使う」という意味で捉え、そうお伝えいただけると助かります。

モーショングラフィックスはソフトを使えば誰にでもできる?

モーショングラフィックスの制作時によく使われるのは、Adobe社のAfter EffectsというCGソフト(映像業界の人々はAEと呼ぶ)です。AEは動画編集ソフト群であるAdobe Creative Cloudに標準搭載されているソフトウェアです。

サブスク型になって初期投資が不要になり、Adobe社もCMで呼びかけているからでしょうか、アマチュアにも普及してきています。それが、多くの方が「モーショングラフィックスできます!」と映像制作市場に登場してきている一因にもなっています。

では、After Effectsが使えればモーショングラフィックスは誰にでも作れるのか? イラスト素材などをフッテージ屋さんで購入すれば、アマチュアやセミプロの方でも、ある程度のセンスと技量でそこそこ合格点の動画が作れるかも知れません。

ただし問題は、制作プロセスでの“やり取り”のこなれ具合とか、事前にきちんとサンプルや企画構成案、コンテなどでクオリティを担保できるか…とかでしょうか。そこは僕たちプロが、自信を持って打ち出せる強みです。

モーショングラフィックスはカッコよく動けばいい?

モーショングラフィックスは、まさにグラフィックスがモーションする(動く)ので、「とにかくカッコよく動かして」というオーダーをいただくこともあります。でも、作り手としては、その前に確認したいことがいろいろとあるんです。

モーショングラフィックスはストーリーこそが命

モーショングラフィックスは、ストーリーと作画デザイン・動き(見え方)を両輪として成り立っています。でも他社の作品を見ても、作画やデザイン、動きや見え方の方に注意が向きがちだと感じています。

デザインは本来、「何を言いたいか」「何を伝え、どう受け止めてほしいか」によって変わってくるはずです。そこがハッキリしていない、つまりコンセプトとストーリー構成が曖昧だと、本質的な意味での見せ方の方針は立てづらいと思うのです。

使う色や何となくのテイストは、クライアント側にデザインの拠り所(例えばコーポレートカラーやデザインのルール)があればそれなりに作れるかも知れません。でも見て分かりやすいとか伝わりやすい、「いいな!」と感じさせる動画を作るには「伝えたい核」がハッキリしていることが絶対条件です。

シンプルな表現だからこそ、作り手の実力が出る

この「伝えたい核」をクライアントとの打合せや対話を通して明らかにして、合意した上で制作に臨むというプロセスは、多分クリエーター紹介サイトで出会ったセミプロでは難しいはず。だから、「伝えたい核」を「構成・ストーリー」に落とし込んだ上で、デザインや見え方を提案できる作り手を選択していただきたいと思います。

コンセプトと構成・ストーリーがしっかり組み立てられ、作画デザイン・動き(見え方)がそのストーリーをさらに分かりやすく、魅力的に伝えているモーショングラフィックスの良作を2点ご紹介します。

先ずは眼鏡市場のブランドで知られるメガネトップの採用広報用モーショングラフィックスです。

この動画は構成・ストーリーがしっかり組み立てられており、それに合わせてデザインされた画像がテンポよく展開されているのがお分かりになるでしょう。

ちょっとした画像の動きや、カットごとにフォーカスがOFFからONになるなどの遊び心もメガネ屋さんぽい表現になっていますが、これも「始めにコンセプトと構成ありき」だと思います。

もう1点。僕たち作り手が一度は参照する、不朽の名作といっても過言ではない作品をご覧ください。

このモーショングラフィックスは、株式会社ペイミーが運営するPaymeという法人向け給与前払いサービスを紹介する約1分間の動画です。

実はこの動画は2018年に制作されたモーショングラフィックスで、2025年7月現在も株式会社ペイミーのサイトで活用されており、全く古さを感じさせない傑作です。

イラストレーターが岡村優太さん、ディレクター・モーションデザイナーが松浦泰仁さんという業界で著名な作家の手によるこの動画は、ストーリーに合わせてワンカットあたりの尺を短くテンポよく展開するのが特徴のひとつです。

この2作品に比べると、巷に溢れるモーショングラフィックスは1カットが長く、画面の動きも乏しい。あるいは動きがあっても単調で(作り手視点で言うとテンプレートそのままで)、視聴者が退屈に感じるものが多い傾向にあると思います。

少し乱暴な例えかも知れませんが、1カットをゆるく延ばしてPayme動画5カット分ほどの情報を収納した印象です。だから冗長で退屈です。ストーリーも間延びして、頭に入って来にくく、従って気持ちも動かされない。

モーショングラフィックスには綺麗なイメージを抱いている方も多く、表現手法としてクライアントに人気もあります。ただ「実写に比べて安く(誤解です)、おまかせで制作できる(これも誤解です)」という理由だけでモーショングラフィックスという手法を選択するのは危険です。

これだけモーショングラフィックスが巷に溢れると、質の低いモーショングラフィックスを発信しても好感は得られません。場合によっては「手抜き!」を見抜かれ、むしろマイナスのプロモーションになってしまうリスクもあります。そういう観点で、一度他社のモーショングラフィックスを吟味してみてください。

モーショングラフィックスでは特に、伝えたいことを絞り込め!

もう一点、作り手の立場で感じていることをお話させてください。

それは「伝えたいことを絞ってもらえると、より良いモーショングラフィックスにできる」ということです。

「あれもこれも」と荷物を多くし過ぎずに、伝えることに優先順位をつけて「最低限これだけは」とポイントをいくつかに絞って、なるべく情報を省いて省いて…という姿勢で臨んでいただくのが、良いコミュニケーションツールとしてのモーショングラフィックスを作るコツだと思っています。

その事例として、言いたいことを絞り込んだ3DCGで組み立てたモーショングラフィックス手法のCMをご紹介したいと思います。

これはタイガー魔法瓶「タイガー 驚速ケトル」の15秒動画です。15秒で伝えていることは「タイガー驚速ケトル」という商品名と、「業界最速45秒沸騰」「安心の蒸気レス」「転倒お湯もれ防止」というワードだけです。

全体を通して文字要素を上手く使っていて画面に大きく出して、伝えたいことを端的に示す構成です。

スピード感のある映像ですが、印象に残したい部分(例えば「45秒沸騰」のところ)ではゆっくり見せ、一本調子にならない工夫もしています。動き自体とてもダイナミックですが見づらさは全くなく、パッと見でも訴求ポイントをしっかり伝えられるデザインになっています。

言いたいことの要素を絞るとは、ひとつの画面に出す情報量を絞るということです。この「タイガー驚速ケトル」動画はそれを徹底しています。一見すると、ひとつのカットの中に沢山の文字が出ているように見えますが、同じ文字がシンプルにデザインされて大きく沢山出ているだけです。情報量という意味では絞りに絞られていますよね。

情報を絞れば見た目のレイアウトも綺麗にでき、一層伝わりやすくなる。そんな好例です。

モーショングラフィックスはもっと良くなる

モーショングラフィックスに限らず、映像・動画の質はしばしば初動で決まります。

どんな目的のために(Why)、誰に向けて(Who)、どんな価値を(What)どう見せるのか(How)。動画づくりで必須な部分(Must)はどこで、任せていただける部分(Free)はどこか…それをきちんとオリエンいただくのがまず重要です(セプティーニホールディングス 加来幸樹氏『要点を簡潔に伝えるオリエン技術』より引用。詳しくは、下記リンクから「動画制作を外注依頼するときの注意点とは?落とし穴を解説 | MOTION.net」をご覧ください)。

その上で、作りたい内容がある程度整理できているなら、構成やストーリーの形で示していただいてもいいかと思います(拝見し、必要に応じて手を加えてこちらからご提案するのは前提として)。

また、作画のイメージがあるなら、リファレンス(参考サンプル)を示していただければなお良いかと思います。CMとか、他の表現のサンプルでも構いません。これで、最短距離を効率よく“共走”できるでしょう。

僕は、『モーショングラフィックスはたこ焼きと同じだ』説を唱えています。ポイントを整理するキーワードは「タコガキモ」。

「タ」ターゲットは誰かを見据え、「コ」構成・ストーリーをしっかり立てる。それに基づいて「ガ」画のトーン&マナーと「キ」キャラクター・イラストデザインを決めて、初めて「モ」モーションデザイン即ち動きを決めていくという、プロセスと優先順位を表現した語呂合わせです。

この「タコガキモ」を意識して、素敵なモーショングラフィックスを一緒に作れたら最高です。

とにかくモーショングラフィックスは粗製乱造気味なのが、作り手としては気になります。クライアントと制作側できちんとゴールが共有されれば、モーショングラフィックスはもっともっと良くできると、作り手のひとりとして思うのです。

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