いまや多くの企業が営業や広報活動の一環に動画を活用しています。
スマホの普及や5Gの到来などの影響もあり、動画施策はもはや欠かせない取り組みとなりつつあります。
動画を企業活動で使用するとなると、必ず発生するのが制作業務です。
スマホカメラの品質向上や編集ソフトの簡易化などにより企業の担当者が自作することも可能になりましたが、まだまだ多くの企業が動画制作を制作会社へと依頼しています。
これから動画制作をはじめる、または今まで内製していた動画を制作会社に依頼したい。
そう考えた際に知っておきたい外注をするときの注意点やポイント、心構えなどを本記事でまとめました。
目次
動画制作、内製と外注どっちを選ぶ?
動画を制作する際にまず迫られるのは、制作会社へと依頼するか自社で作るかの判断です。
それぞれの方法にはメリット・デメリットが存在します。
最初に内製と外注の性質の違いと、選択する際のポイントを確認しましょう。
動画を内製する
動画を社内で内製すると決めた場合、企画、撮影、編集まですべての制作工程を自社で行うことになります。
最近では構成をフォーマット化して動画を制作するアプリケーションもあり、自社で制作することの敷居も低くなってきています。
しかし当然のことながら、動画制作のどの工程にも最低限のノウハウが必要です。
そのため担当者には各工程について技術を身に着けてもらうことになります。
このノウハウは複数本の動画を作り続けることで社内に蓄積されていきますから、会社にとって大事な資産になっていくのは間違いありません。
ただしすべての企業が専任で動画制作担当を任命できる人材がいるとは限りません。
実際多くの企業で人材不足や、他の業務との兼ね合いに悩まされているという例もあります。
学ぶべきことが多く、時間もかかる動画制作を自社で行うと決意した時には、現実に実行できる体制をあらかじめ作ってから取り組み始めるべきです。
動画を外注依頼する
世の中には動画制作を生業とした制作会社がたくさんあります。
そういった制作会社に外注する、つまり業務を外部に任せる方法もあります。
その場合は制作会社のスタッフやクリエーターに動画の使用意図や社内の要望を伝え、撮影・編集などを行ってもらうことになります。
中には企画やコンセプト作りの時点から参加している制作会社もあります。
プロの技術や機材を駆使するので、メッセージ性も画質も当然自社内で作るよりハイクオリティなものになります。
ただし外注をしているためコストが発生します。
限られた予算の中で制作する際には、このコストがネックになることも大いにありえるでしょう。
選ぶコツは、「何にポイントを置くか」
内製も外注もそれぞれに長所と短所があり、どちらが良いと一概には言えません。
そのため制作体制を決める際には、どちらの方法を取ると何が可能でどんな不都合が生じるのか、よく天秤にかけて考えるところからスタートしてください。
制作をする動画はいつも条件が同じというわけではなく、誰に見せたいのか、何を伝えたいのか、どのような目的で制作するのかは時と場合によって異なっています。
それと同時に、制作時に求める要望も時々で違いがあるはずです。
そういった諸条件を照らし合わせて、内製か外注かを判断をしましょう。
実際にどちらか選択する際に決め手になるポイントの例を以下に挙げてみますので、参考にしてみてください。
もし制作したい動画がSNSなどに継続的に投稿することを目的にしているなど、とにかくスピード感を重視したい場合、その時は内製が向いています。
外部とのやりとりの面でタイムロスがないので、量産の体制をあらかじめ作っておくことができれば、動画をある程度のスピード感を持って制作することが可能です。
対して、動画をしっかりと作り込みたい場合、内製よりもプロへの外注が適しています。
例えばブランドムービーなど、1本制作をしたらそれを長い期間使い続けたいものなどは、内製のクオリティでは不十分だと言えます。
動画の使用用途を考えて、内製外注の決め手としましょう。
社内で制作するか外部に依頼をするかは、動画の雰囲気やトーンに影響を及ぼします。
もし採用広報の一環で社内の様子を動画に収めたいと思ったとき、自社ならではの温かみかプロの魅せ方、どちらを選びますか?
また他にも業界や商品の理解度とプレゼン力にも違いが生じます。
製品サービスを扱う自社だからこそ深い理解があるため、動画にしたときの説得力が高まるかもしれません。
一方で制作会社は視聴者に魅力を伝える上手な手法を知っています。
どちらが目的に合っているのか、検討してみてください。
内製と外注でもっとも特徴的な差が出るのは、コスト面です。
もちろん外注で依頼すると、コストがかかってきます。
予算が限られていて、制作会社に依頼ができない動画などは内製を選ぶのが適しているかもしれません。
ただしその分、担当者への負担や大きな手間がかかってくるのは事実です。
その負担を軽減するために外注を選ぶ企業も実際にたくさんあります。
また場合によっては、社内リソースや人件費など動画制作に取られる負担を考えたときに、結果的に外注したほうがコストが低いこともありえます。
制作会社に依頼するときに陥りやすい失敗
内製をする外部に依頼をするかを検討した結果、どちらを選択したでしょうか。
外注を決めたとしたら、今後は制作会社とのやりとりが始まります。
大切な予算を割いて依頼し、大事な動画制作を担ってもらうので、もちろん会社の選定や付き合い方で失敗はしたくありません。
今回は「制作会社を選定するとき=出会い篇」と「制作を進めるとき=付き合い方篇」に分けて、陥りやすい問題を具体的に挙げながら注意点を説明していきます。
出会い篇
まずは制作会社を選定するときに起こりがちな失敗例を見ていきましょう。
制作会社選定での失敗1つ目は、「価格の安さだけで選んでしまう」ことです。
企業の施策ですから予算に上限があるのは当たり前です。
ですが、安さだけにつられることなく、その安さの理由を考えてみることが必要です。
価格の差は、制作中のスタッフの体制・対応や出来上がった動画の品質に表れます。
作ろうとしている動画の目的や求めるものが、その品質で充分満たせるかを吟味しましょう。
例えば、コンビニスイーツとデパートのスイーツを思い浮かべてください。
コンビニスイーツは仕事帰りに買って家で食べるには十分美味しい商品です。
しかし目上の人にお土産で渡すとしたら、デパートのスイーツの方が適していると考えられます。
動画制作も同様で、TPOに適した品質の動画が求められてくるはずです。
価格はその判断材料になっていることを忘れないでください。
制作会社選定で起きやすい失敗の2つ目は、「制作会社のビジネスモデルを理解していないまま選ぶ」ことです。
実は「動画を作る」会社にも様々なビジネスモデルがあることはご存じでしたか?
大きく分類するのであれば、責任者であるプロデューサーを中心にスタッフを束ねて制作を行うプロダクションと、フリーランスのクリエーターとクライアントを仲介するクラウドソーシングの会社に分けられます。
それぞれのビジネスモデルには体制や価格設定の差異や、得意不得意が存在しています。
例えばプロダクションはプロデューサーと直接やり取りできコミュニケーションの障害は少ないですが、価格設定は高いものが多い傾向にあります。
一方クラウドソーシングの場合、価格は抑えられますがマッチングするクリエーターによってクオリティが左右されてしまう特徴があります。
制作を依頼する会社がどのようなモデルで業務をしているのかを把握しておかないと、求めている諸条件とミスマッチを起こす可能性があるのです。
どのような体制で作業が行われるのか、あらかじめ認識を統一しておきましょう。
付き合い方篇
続いて制作が始まってから、制作会社と仕事をしていく上で気をつけたいポイントを紹介します。
制作が始まると、まずはスタッフとどのような動画を作りたいかすり合わせるオリエンの機会を設けます。
その際に十分な情報をスタッフに共有できていないというのがよく起こるミスです。
株式会社セプテーニ・ホールディングスの加来幸樹氏(『Creator 2018』宣伝会議、掲載)は「要点を簡潔に伝えるオリエン技術」として
- WHY(どんな目的のために)
- WHO(どんな人に)
- WHAT(どんな価値を)
- HOW(どんな表現で)
- MUST(縛る部分)
- FREE(自由な部分)
の6項目を明確にし、共有することが重要だと述べています。
動画となると、「HOW」(どのような手法を使うか)ばかりに囚われてしまいがちですが、重要なのはそこだけではありません。
また意外とスタッフとの意識のすり合わせで大切なのは、欠かせない条件「MUST」とクリエーターにお任せする部分「FREE」の二つを共有することです。
制作の質がぐんと高まりますので、試してみてください。
制作を進めるときに任せきりになってはいけません。
スタッフはパートナーと考え、伴走するつもりで動画づくりをしていきましょう。
ただし「こちらで先導しないとスタッフが動いてくれない」というのもまた良い状態とは言えません。
優秀なスタッフは様々な場面で提案をしてくれるはずです。
何事もお膳立てが必要だと感じたら、制作会社自体を見直してもいいかもしれません。
スタッフへ修正依頼や何かを提案するときは、その意図まで伝えましょう。
内容のみを伝え、注文をつけるだけでは不都合がでてきます。
クリエーターたちは動画づくりの際、1シーンごとに意味や流れを考えながら制作をしています。
そこに意図が不明な指示が出されたときに、なぜそのような修正をするのか理解ができないと新たな流れを見出すことが困難になります。
結果クリエーターは言われた通りに修正を加えたとしても、最適解を出すことができません。
修正依頼や提案の際には、その意図を合わせて伝えることを忘れないようにしましょう。
まとめ 出会うべき制作パートナーとは
制作会社に動画制作を依頼するときの注意点について解説をしました。
最終的に制作会社を見極めるときには、ビジネスをするうえでパートナーとして適切かという視点をなくさないでください。
動画クリエーターだからと言って特別な存在だと考えず、期限を守れるか、コミュニケーションがうまくとれているか、誠実さなどを見て考えてほしいのです。
そうすれば制作の中で直面するかもしれない、様々な落とし穴を回避できることでしょう。