動画制作見積書の取り方と読み方!制作会社の力量が見える | MOTION.net

動画制作見積書の取り方と読み方!制作会社の力量が見える

ビジネスでは、発注に際して見積もりを取るのは常識です。
それが数十万や数百万、時には数千万円を超える動画(映像)制作の場合は、見積書取得は必須でしょう。

では、皆さんは制作会社から提出される見積もりをきちんと比較できますか? 

今回は、数字から制作会社の特徴や力量を読み取る方法や、発注先選定をスムーズにする見積書の取り方をご紹介します。

まずは見積書の構造を知ろう!

動画制作(映像制作)の見積書には定型がありません。各制作会社が独自のフォーマットで作成する場合がほとんどです。
だから、制作の仕様や出来上がりの品質も読み取りにくいケースが多々あります。細部に注目すると一層分かりにくくなります。

まずは見積書の構造を知った上で、大きく括って読み取ることが必要です。

動画制作の見積書は、大きく4項目で作られる

各社独自のフォーマットとはいえ、動画制作の見積書は大きくは4つの費用項目で作られているケースが殆どです。

その大項目とは、①全体設計に関わる項目②撮影に係る項目③仕上げに係る項目④全体進行に関わる項目の4つです。

実際に受け取る見積書には上記の①から④がバラバラに並んでいるかも知れませんが、それを大項目にまとめて見ると、制作会社の「考え方」が浮かび上がってくるでしょう。

②と③は制作仕様が反映されます。①と④は、「どんな制作体制を組むか」や、「どう制作を進めて行くか」が表現されていると捉えてください。

各項目には企画内容に応じた細目が並ぶ

では4つの項目にはどんな細目が並ぶのか。以下に代表的なものを一覧化しましょう。

① 制作全体に関わる項目

【主要制作スタッフ】

  • プロデュース費
  • ディレクション(演出)費
  • 同アシスタント人件費
  • プロダクションマネージャー人件費等

【プリプロダクション】

  • 企画費・構成費
  • シナリオ費
  • コンテ費
  • リサーチ費
  • 資料費等

② 撮影に係る項目

【撮影スタッフ・機材】

  • カメラマン、音声マン(Video Engineer)、照明マン、各助手…等スタッフ人件費
  • カメラ、レンズ、カメラ周辺機器(三脚、モニター等)、録音機材(マイク、ミキサー等)、特殊機材(クレーン、移動車、ドローン等)…等撮影機材費
  • 照明機材、同周辺材料…等照明機材費
  • 車両費、ハードディスク等記録媒体費…等

【出演・同関係費】

  • キャスト(タレント、モデル、エキストラ等)出演・契約費
  • ヘアメイク、スタイリスト…等スタッフ人件費

【スタジオ・美術】

  • 撮影スタジオ、ロケ地借用、美術(大道具、小道具)、衣装…等費用

③ 仕上げに係る項目

【編集関係】

  • 仮編集費(オフライン編集)、本編集費(オンライン編集)
  • カラーグレーディング費(カラコレ)、合成編集費
  • CG・アニメーション制作費
  • フッテージ素材購入費

【録音・同関係費】

  • ナレーション収録、MA(音源ミックス)スタジオ
  • 音楽効果費(BGM、効果音)
  • ナレーター・声優出演・契約費

④ 全体の進行に関わる項目

【制作進行費】

  • 交通費、宿泊費、保険費、諸雑費

細目は企画の内容に応じて変わります。
企画の立案も含めて見積依頼をする場合は、企画ごとに構造も細目も変わってきます。

例えば「実写ではなくアニメーションで」となれば「②撮影に係る項目」はほとんど不要ですが、「③仕上げに係る項目」の「CG・アニメーション制作費」が大きく計上されます。
セリフを付けるなら「ナレーター・声優」の費用が発生します。

見積書は一層複雑になり、比較検討の難度は上がってしまいます。

動画制作における見積依頼のポイント3つ

では、動画制作の発注先選定のために複数の制作会社から見積もりを取る場合、どんな進め方をすればよいのでしょうか。

見積依頼の3つのポイントをお教えします。

ポイント1 仕様ではなく、要件を揃える

機材費や専門スタッフの人件費は理解しやすく、比較も容易でしょう。
前述の大項目の、②や③がそれに当たります。

しかし、発注する側が「仕様」に落とし込むのは難しいと思います。
どんなカメラ機材を使うのか、撮影は何日必要か、スタッフの人数と役割をどう設定するのか…などは、制作会社の仕事と割り切ってお任せした方がよいでしょう。

それよりもむしろ「撮影したい内容」「求める映像の質」を伝える方が、発注先の選定に役立つ見積書を得るのに有効です。

例えば撮影したい場所や項目、出演者やインタビューしてほしい人数、ナレーションの有無やCG等のグラフィックを加えるかなど、クライアントとしての要望や要件を示した上で見積もりを依頼しましょう。

ポイント2 品質をつくる項目を読み取る

例えば企画費などのいわゆるソフト部分や主要スタッフの起用など、動画の出来上がりを決める「品質をつくる項目」は、見積書から読み取り比較するのが難しいところです。

大手広告代理店から大型案件の見積を依頼される場合は、担当する主要スタッフ(特にプロデューサーやプランナー、ディレクター、カメラマン等)の名前や実績を求められる場合が多くあります。

同じような発想で、主要スタッフが過去に担当した動画(映像)や、提示された見積内容に近しいサンプル動画を提出してもらい、それを参考にしながら見積を比較する方法も有効です。

ポイント3 低予算案件の場合は要件を絞る

例えば100万円を下回る予算で制作する場合は、見積書を作成する側からいえば、見積もり細目を立てにくくなります。

「一式」が多くなり、「企画費・構成費」などはディレクターなどの人件費項目に含めることで予算を絞らざるを得なくなります。
クライアントの立場では、結果的に「総額」でしか比較できなくなるかもしれません。

その場合は、「安かろう、悪かろう」を回避する工夫が必要です。
例えば撮影日数や撮影クルーの人数とか、比較する項目を絞るのが発注先を選定する近道です。

要件を絞った項目のみ、追加で細目を求めてもよいでしょう。
「A社には音声スタッフの記載があり、B社にその項目がない」場合、制作に臨むスタッフ編成が焦点化できます。

つまり「音声スタッフ不要で品質は担保できるのか」が、比較検討する際の確認点にできるのです。

見積もりの意義を高める2つの工夫

見積もりが、発注側と受注側の腹の探り合いになるのは不幸です。

なぜなら制作会社は金額感を最優先し、数字に表れない仕様を落とすことに注力せざるを得なくなるからです。
例えばスタッフの人選や周辺機材のスペックなどが影響を受けたりします。
結果的に質の高い動画が生まれる可能性が低くなります。

そこで、見積もりから制作会社の力量や仕事の質を見抜くための工夫を2つご提案しましょう。

工夫1 予め予算感を伝える

複数の制作会社から発注先を選定することが目的なら、相見積を取る場合でも予め予算感を伝える手があります。

それでは相見積にならない…確かに金額面の比較はできません。
ですが、その予算感でどんな動画を作るのかという方法や制作体制を見積書で表現してもらうことはできます。

クライアントが示した予算に寄せるために、総額から値引きする制作会社もあります。
その場合は、「値引きをしてでも受注したい」という意思が読み取れます。

あるいは、求める仕様の変更を提案してくる見積書もあるでしょう。

要件に対して、撮影日数や表現手法の変更、撮影機材やスタッフ体制の変更を提案されることもあるかもを知れません。
いずれの場合でも納得できる理由が示されるのなら、発注先として比較検討する有効な手がかりになるでしょう。

工夫2 見積もりの説明を受ける

見積もりの数字だけから制作会社の姿勢や力量を読み取るのは、同業の私たちでも難しいことがしばしばです。
そんな時は素直に、見積書を説明してもらう機会を設けましょう

説明を受ける機会があれば、見積もりに込められた制作会社の狙いを知ることもできますし、具体的な要望や要件の擦り合わせもできます。

何度も要件を変えて見積もりを求めるよりは、見積書を材料に対話をする。力量のある制作会社ほど真剣に臨んでくれるはずです。
クライアント側にとっても、発注先の比較や見極めが圧倒的にやりやすくなるでしょう。

見積書を制作会社選定の入り口に

全ての製品・サービスの値決めが、なんらかの根拠や狙いをもって行われるように、動画制作の見積書も「どんな動画を作るのか」という設計を前提に算出されます。
つまり見積書は数字で表現された設計図であり、ひとつのプランに過ぎないのです。

大切なのは設計の考え方です。見積書を材料に対話をしながら、総合的に制作会社を選定してください

各種お問い合わせはこちら