動画制作の流れを皆さんはご存じでしょうか。
なんとなくイメージはつくけれど、実際担当者としてどこに留意し進めるべきか分からないなどのお悩みはありませんか。
動画制作に初めて臨まれる方や、今までの進め方に疑問がある方など、動画活用をする様々な企業の方に参考にしていただけるようご説明します。
目次
動画制作の流れをイメージするために
動画制作の流れと言っても、規模感の大小や撮影の有り無し、ナレーションを入れるかなどで条件は変わります。
またどんなジャンルのものを制作するのか、動画に込める狙いは何かも変動要素になってきます。
そこで、今回は一定のイメージを共有するため、架空の企業である株式会社Aを例として出してみたいと思います。
その株式会社Aは輸入雑貨を販売していて、キッチン用品を主な商材としています。
今回はフードプロセッサーの商品プロモーション動画を制作することになりました。
想定する撮影は1日で、ハウススタジオを借りて行います。
モデルさんが商品を実演しているところを撮影し、シンプルなナレーションやBGMを入れるような仕上がりを目指します。
今回は広告代理店などには依頼せず、担当者が発注先選定から始めます。
これを共通イメージとして、動画制作の流れを見ていきましょう。
発注先の選定
まず動画を外注しようと決めた場合は、制作を依頼する先を選定しなくてはなりません。
その選定についてポイントを紹介していきます。
プロダクション(制作会社)に依頼する場合
最もオーソドックスなのは、映像制作会社に依頼する方法です。
制作会社はプロダクションとも言い、プロデューサーが制作チームを束ねて、企画やコンセプト決めから撮影、編集、納品までの全工程に責任を持って実行します。
企画性を必要とし、撮影が大がかりであったり制作期間が長期に渡ったりする動画の制作も日頃から行っています。
予算感は高めの場合が多いとも言えます。
クラウドソーシング系会社に依頼する場合
最近多くなっているのが、クラウドソーシング系の動画制作会社です。
仕組みとしては、その会社にフリーランスのスタッフが登録しており、企業が希望するスキルや得意ジャンルとマッチするスタッフをアサインする形態です。
比較的安価に制作ができるケースが多く、シンプルな動画を作るのに向いていると考えてよいでしょう。
個人に依頼する場合
フリーランスで活動するクリエーターに依頼をするという選択肢もあります。
この場合、個人で撮影編集を行うことが多いので、その場合は大がかりな仕掛けが必要な撮影を行うのは難しいかもしれません。
逆に小回りが利くので、「素材が既に手元にあって編集のみを請け負って欲しい」などの要望には適していると言えます。
発注先に出会うには
依頼先に出会うには、基本的にwebを活用することになると思います。
クラウドソーシング系の会社だけでなく、今は多くの制作会社もweb上にホームページや広告を出していますので、直接制作会社に行き当たることもあり得ます。
また、見積比較サイトなどもあるので、そういったサイトを確認するのもよいでしょう。
ただし、比較サイトは玉石混交なものもあり、紹介文などをしっかり読み込んでください。
さらには他社事例などを探してみて、紹介をしてもらうといった方法もあります。
個人のクリエーターと出会うなら、SNSやココナラというサイトなどをあたってみることになると思います。
今回の架空の株式会社Aは、Web検索で探し当てたいくつかのプロダクションに問い合わせし、その中から発注先を選定することにしたようです。 複数の制作会社から1つに絞るため、コンペをすることになりました。
コンペ
複数の発注先候補を絞るには、例えばコンペという手法をとることができます。
コンペの方法には大きく分けると、
- 実績コンペ
- 見積コンペ
- 企画コンペ
の3種類があります。
それぞれの組み合わせもありますが、今回は各手法のポイントをご説明します。
実績コンペ
まず実績コンペですが、これは作りたいと考えている動画ジャンルの実績を提出してもらい、それを参照しながら実際の発注先を決めるやり方です。
株式会社Aでは、製品・サービスなどのプロモーション動画の実績を見せてもらうことになります。
見積コンペ
次に見積コンペです。
候補となる制作会社に見積もりを提出してもらい、それを参照し発注先を決めます。
ここで注意をしなければならないのは、要件をきちんと決めておくことが重要だということです。
そうしておかないと、提出される見積もりの費用項目や単価がバラバラになってしまい、仕様の本質的な部分を読み取れなくなってしまいます。
基準となるスペックと予算の目安を先に提示しておくのが、よい発注先と出会うための近道です。
今回の株式会社Aは、モデルの出演費も込みで100万円前後と決めました。
この見積コンペの方式では、提出された見積もりや仕様書がどのような振り分けになっているのか読み取る力が大事になってきます。
各社に説明の機会を設けてもらうのもよいでしょう。
企画コンペ
最後に企画コンペです。
これも見積コンペ同様、要件や基準のスペック、予算目安などを先に提示するのが必要になります。
それに加えて、具体的な要望を示し同時に情報を与える、つまりはオリエンテーションをすることでいい企画コンペにすることができます。
思い付きのアイデアで出された企画より、もっと本質を捉えた企画を採用するためには必須の事項です。
株式会社Aは自社の商材のUSP(独自の強み)や動画を届けたいターゲットとなるペルソナ像などを伝えました。
そして最後にコンペのマナーの部分ではありますが、企画作成にかかる費用を支払うかどうかは予め制作会社に示しておくことも留意しておいてください。
少なくとも画コンテを作成するにはそれなりの費用がかかります。そのつもりで依頼することが必要です。
オリエンテーション
発注先が決まったら、企画コンペをした場合でも改めてオリエンテーションを行いましょう。
制作スタッフと「誰に何をどういう手法で」と、求める動画にするためのすり合わせをしていきます。
株式会社セプテーニ・ホールディングスの加来幸樹氏が提唱する「要点を簡潔に伝えるオリエン技術」(『Creator 2018』宣伝会議、掲載)では、オリエンの場を上手に活用するコツとして
- WHY(どんな目的のために)
- WHO(どんな人に)
- WHAT(どんな価値を)
- HOW(どんな表現で)
に加えて、
- MUST(必須事項にしたい、縛る部分)
- FREE(制作会社に任せる自由な部分)
を制作スタッフに伝えることを挙げています。
これはとても良い指針だと思います。本企画の方向性を決める際にはぜひ活用してみてください。
もちろん、コンペの要件提示にも使えます。
撮影前の工程
オリエンが終われば、次は企画とシナリオの作成工程です。ここではより有効な動画ツールにするための取材(シナリオハンティング)を受けることになります。
株式会社Aの商品プロモーション動画の場合は、主役となるフードプロセッサーの他社製品と比べた優位性などを詳しく取材されることでしょう。
そして、同時にロケーションハンティングが行われます。
ロケハンの工程では撮影場所の選定だけではなく、香盤表と呼ばれる撮影スケジュールの作成も行います。
他にも今回のようなモデルやナレーターを起用しての制作の場合は、キャスティングもこの工程の中に入ってきます。
また、モデルの衣装等も準備します。
この撮影前の工程で大切なのは、スタッフ任せにしないことです。
逆に言うと担当者の努力で品質を高めることができる局面だと言えます。
スタッフに遠慮なくどんどん要求を出してください。
株式会社Aも期待通りの動画を作り上げるために、シナリオなどについて指示を出すことにしました。
撮影
撮影中、制作スタッフは極めて専門的である自分の仕事に専念します。
そのため場合によっては視野が狭くなってしまっている可能性もあります。
だから担当者は撮影工程や撮影されるカットに関して、より俯瞰的な目線で見る存在でいることを意識してください。
例えば採用広報のように社内で撮影をする場合は、被写体となる自社の社員と撮影クルーとの間を取り持つような動きをするべきですし、導入事例動画のようなお客様先に伺う場合はご迷惑をおかけしていないか注意を払うことが大切です。
他にも予定されたシナリオ計画通りに撮影が進んでいるか、映ってはいけないものが映り込んではいないかなど、様々なところに気を配りましょう。
今回、株式会社Aの担当者は自社の商品であるフードプロセッサーが、ブランドイメージを損なうことなく綺麗に撮られているかをモニター前で細かくチェックをしました。
結果、満足できるカットを撮ることに成功したようです。
仮編集
撮影が終わったら編集作業に入ります。
その際、完全に出来上がる前にチェック版として仮編集が行われます。
ナレーションはスタッフが仮で当てたものであったり、色調整などの細かい部分にはまだ手が入れられていなかったりする段階です。
ただし、ここで計画していた企画やシナリオ通りの仕上がりになるかどうかは、ある程度は判断できます。
オリエンの際に共有した事項を振り返りながらチェックしてください。
もし仮編集と事前の想定イメージとの間で相違があるのなら、本編集前に制作スタッフと力を合わせて一緒に軌道修正しましょう。
構成を組み替えたり、ナレーションや字幕でカバーしたり、場合によっては追加の素材撮影が必要になるかもしれません。諸条件によって判断してください。
期待外れの動画にしないための予防策は、各工程でスタッフとコミュニケーションをよく取っておくことです。
いままで合意してきたことがきちんと反映されていれば、事前のイメージと大きく齟齬が生じることも防げるはずです。
担当者とスタッフ間の信頼関係も、動画作りを成功させるためにとても大切なファクターになってくるのです。
仮編集試写
仮編集がディレクターから上がってきたら、決裁者を含め関係者でその動画をチェックする試写を行います。
関係者からの要望を掬い取る場所だと考えて、試写は誤魔化しなくやることが重要です。
今まで各工程でどんな指示をスタッフに出してきたか、そこでの評価や納得感などを、事前に関係者に説明しておくと試写はスムーズに進みます。
決裁者や上司などが細かく注文をつけてきそうなら、動画制作の早い段階から随時、報告や相談をしておくことをお勧めします。
本編集・MA
いよいよ最終工程です。本編集は圧縮されていない動画データで色調整等を施しながら行います。またナレーション収録や、BGM等をつけるミキシングなどのMA(マルチオーディオ)も実施します。
動画の規模によってはスタジオなどに入らず、ナレーションは自宅録音で、色調整やミキシングは編集者のPC上で行うケースも増えてきています。
株式会社Aの商品プロモーション動画も、予算を考慮し、この簡易的な方法で仕上げが行われました。
最終工程で重要になるのは、確認できる時点でしっかりチェックや指示出しをすることです。完成してから修正しようとすると、費用が別途発生してしまうこともあるので注意が必要です。
この本編集と音編集(MA)の工程は、動画が完成する最後の道のりです。事前に懸念をクリアした上で、楽しみながら臨めるとよいでしょう。
こうして株式会社Aの商品プロモーション動画は無事出来上がりました。
マーケティングや営業に活用できる、有効な動画に仕上がったようです。
まとめ
動画の制作はスケールの大小はあるにせよ、発注者とスタッフの二人三脚で進みます。
だから、互いに歩調を合わせて同じ目標に向かって進む意識が必要です。
信頼できるパートナーを見つけて、本当に役に立つ動画制作を目指しましょう。